職場のヘンな人とゴーヤの佃煮
猛暑が続いていたのが、ここ数日は朝晩が涼しくなって楽になりました。
夏といえばゴーヤの季節ですが、ゴーヤといえば私はある人を思い出します。
もう十年も前のことになりますが、フリーランスの翻訳者になる前に
働いていた会社にいた人で、私は長期記憶に問題があるので
失礼ながらもうお名前も忘れてしまいました。
派遣社員としてその企業の50人くらいの部署に通っていましたが、
勤務初日、所属することになる10人くらいの課の人たちに挨拶をしました。
「部長の○○です」「課長の○○です」と皆マジメに挨拶をしている中、
定年間近と思われるその人は「○○です。ヒラで~~す」と
妙にヘラヘラと挨拶をしてくれました。
就業中もときどき奇行が見られ、「まいっちゃうよな~、
シコふんじゃうよ~」と意味不明なことをブツブツ言っていたかと思えば
部屋の隅に行って本当にシコを踏んでいるではありませんか。
お昼も自席でお弁当を食べつつ、ラジオだか落語だかをイヤホンで聴きながら
「ひゃっひゃっ」と大声で笑っています。
同じ部署の人たちは彼の奇行には慣れているらしく、特に反応がありませんでしたが、
ある朝、社員証でタイムカードを押すときに(機械にピッとかざす式)
機械の何メートルも先からその人が大手を振り上げながら
助走をつけて走ってきて、すごい勢いで社員証を押し当てるのに出くわしました。
その人の奇妙な行動を初めてみる他部署の人たちはギョッとして
いけないものを見てしまったかのように慌てて目をそらしていました。
私の隣の席の社員のお姉さんは「ジジイ、気持ち悪い」と言って
毛嫌いしていましたが、私と同時に入った派遣社員の人は
「ああいう人が一人いるとホッとするよね」と言っていました。
どう受け止めるのかは人それぞれなのですよね。
本人はいたって幸せそうでした。
変人でも、大人数いれば、中にはそれを面白いと思ってくれる人もいるのです。
周りとのずれ具合が誰かの癒しになることだってあるのですね。
さて、私はそんな変人さんに同類と見破られていたからなのか、
あるいは皆と一緒に毎日社食でお昼休みを過ごすのに疲れ果てて
自席で独りご飯をしていたからなのか、あるとき、
私だけ、その人から奥さんが作ったというゴーヤの佃煮をいただきました。
ゴーヤの佃煮なんて初めて聞いたのですが、食べてみると絶品。
先日思い出して、久しぶりに作ってみました。
もちろん砂糖はラカント。
今頃は楽しくひゃっひゃっと笑いながら
老後生活を送っていらっしゃるんでしょうかね。