文楽の効用
今日はちょっとマニアックな話題を。
きっかけはまったく覚えていませんが、
かれこれ10年くらい経つでしょうか。
最初はわけもわからず、ただ人形可愛さに通うようになりました。
ストーリーは荒唐無稽なものも多く、
「ええっ⁉そういう展開⁉」なんてこともよくあります。
それでも、泣いている人もいるので、「泣ける??」
と最初は疑問に思ってました。
ただ、面白いなーと思ったのは、
映画やドラマと違って、登場人物が自分の心情を告白する場面があることです。
私はこんなことをしたけれど、実は、こう思ってのことなんだよ、
などということを節にのせて長々と語るのです。
アスペルガーもちの私は、映画やドラマを観ていて、時折、
登場人物の心情がわからずに「なんで?」となることがありました。
それを文楽ではいちいち説明してくれるので、わかりやすいのです。
「クドキ」というものがあって、ヒロインなどが心情を吐露するんですね。
文楽を観るようになってから、人の心の複雑さがずいぶんと
理解できるようになった気がします(元々頭が単純にできているので、これで成長)。
そういえば、わりと文楽ってアスペ好みの芸ではないでしょうかね。
私はドロドロした感情って苦手な方でしたが、
人間ではなく人形が演じていることで、ワンクッション入るので、
逆に感情移入しやすいような気がします。
最初は文楽一辺倒だったのが、だんだん人間が演じる歌舞伎も観られるようになって、
この頃は歌舞伎を観に行くことの方が多いかもしれません。
脳というのはやっぱり発達するんです。
文楽と歌舞伎の観客を比べると、文楽の方がやはりマニアックそうな人が
多いような気もします。
あるとき友人を連れて行ったら、「客層がおかしすぎる」となぜかウケていました。
確かに、ロビーで脇目もふらずにパンフレットを読みふけっている人だとか
(私もその一人。あらかじめ読んでおかないと登場人物の区別がつかない)、
座席に正座で座って観ている人だとか(最後列だから別にいいんだけど)。
同じ演目を何度も上演するというのもアスペ向きですね。
私は自閉圏の人間にしては、同じ本や映画を何度も繰り返し読んだり観たり
する方ではないのですが、古典芸能に関しては、
お気に入りの演目は必ず観に行きます。
同じ演目を別の演者が演じるのを観るというのも楽しみのひとつです。
繊細なものがお好きな方は、ぜひ一度文楽に足を運んでみてください。
本場、大阪の文楽劇場では一幕だけ観れる幕見席もあります。
わざわざ前もってチケットを取らなくても
気が向いたときにフラッと寄れるなんて、関東在住者からすると羨ましい限りです。
なんで今回こんな記事を書きたくなったのかっていうと、
人間国宝である太夫(語り手)の竹本住大夫さんが先日亡くなったからなんです。
私が文楽で初めて泣けたのも、住大夫さんの語りでした。
引退は数年前でしたが、寂しいなあ。