それでも雨が降るときは

ホリスティックに発達障害とつきあう

言葉の獲得

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私は子どものころ、母親から「この子はうんとかすんとかしか言わない」

と言われていました。極端に無口な子どもで、「日曜日、どっか行きたい?」

と訊かれても、「別に」としか答えない可愛げのない子どもでした。

 

今思えば、子どものころに私が生きるのが大変だと感じていた理由のひとつは

言葉が上手く出ないことだったような気がします。

自分の感情を言葉で表すのは今でも得意ではありませんが、

当時は必要なことを話すのすら大変でした。

 

それはまるで、外国語を話すようなものだったのかもしれません。

バイリンガルでもない限り、自分の言いたいことを淀みなく

外国語でスラスラと言える人はほとんどいないでしょう。

たいていは、この単語がしっくりくるか、それともあの単語かと

山積みになったおもちゃ箱から欲しいおもちゃを探すように

言葉のストックからぴったりの言葉はないか探り当てます。

子どもの私が母国語である日本語を話すのも、ちょうどそんな感じでした。

 

 そんなこと言ったって、あんたそんだけ長文書いてんじゃん、

と思う人もいるかもしれませんね。

どうして私がうっとうしいくらいの長文を書けるまでになったのか、

振り返ってみると、ちゃんと段階を経てきたことがわかります。

 

以前の記事にも書きましたが、子どものころは、マンガばかり読んでいました。

本もたくさん図書館で借りていましたが、

図書カードにスタンプが溜まっていくのが嬉しかった

(自閉っ子にありがちな、収集癖の一種ですかね)だけで、

大して読んではいなかったんです。

目の使い方が悪くて目が滑って(行が飛んで)しまったり、

遠視で目が疲れやすかったりしたこともあるかもしれません。

とにかく、絵でイメージ的に理解する方がうんと楽でした。

 

まず言葉を詰め込む第一段階として役立ったのは、

大学時代に始めた校正のアルバイトだったと思います。

原稿とゲラ(出力紙)を突き合わせて誤字脱字を探す作業ですが、

視覚情報処理は大得意なので、とにかく仕事が早かったんです。

一方で、ゲラのみで素読みする校閲は苦手でした。

つまりは、文字を言葉としてではなく写真として見ていたんですね。

校正の仕事は、その後も校正プロダクションから仕事をもらったり、

派遣の仕事で十年前くらいまで度々やっていましたが、

突き合わせの校正作業は原稿とゲラを並べて見比べるので

視線が左右に動くことから、遠視の私でも目が疲れにくかったように思います。

 

その頃に、私の中に大量の言葉が詰め込まれていったような気がします。

毎日目にしていたのは、一応プロとして食べている人たちの文章ですから、

一日中大量のツイッターを読んでいるのとは違って、

一定水準の文章が頭の中にどんどん入っていきました。

特に読書家というわけでもなかった私がその後翻訳者として

文章を書いて生計が立てられるようになった基盤も

それでできたのではないかと思います。

 

さて、インプットを大量にしたら今度はアウトプットです。

といっても、アウトプットしようなどと意識していたわけではなく、

ただ、将来を考えて手に職をつけようと思い、

不得意ではなかった英語にたまたま目をつけただけの話です。

この辺の経緯は近々あらためて書こうと思います。

 

「英語ができる=翻訳ができる」という図式は間違いで、

和訳に関して言えば、日本語の文章力がものを言います。

ついでに言ってしまうと、英語力は通訳ほど必要ありません。

時間をかけられるので、パッとわからなくても辞書を引いたり

調べ物をしたりすればいいからです。

 

そんなわけで、翻訳者として生計を立てることになり、

毎日4000文字ほどの日本語の文章を英語から起こす作業を

毎日毎日(いや、仕事のない日もあったけど)10年間やってきました。

 

よかったと思うのは、ライターと違って、自分で文章の構成を考えたり

しなくてすむことでした。

自閉症スペクトラムの人間は、何もないところから物事を生み出すのが苦手です。

何でも書いてよいとなっても、いや、何でもよいとなるほど、

何を書いていいのかわからなくなります。

まあ、ライターのお仕事は実際には何でもいいってわけじゃないでしょうけど。

 

翻訳の場合は、構成なんて考えなくていいし、そのまんま訳せばいいだけの話。

つまりは、純粋に「文章を組み立てる」ことに専念できるのです。

毎日その作業をやることによって、日常会話でもスムーズに言葉が

組み立てられるようになったような気がします。

今はもうほとんど苦労しません。

むしろ、物事の説明をするのは得意になってきたようにすら感じます。

 

ここにたどり着くまでには、相当な量をこなしてきたわけだし、

うんうん苦しみながらそれをやっていた時期もありました。

 でも、意図せず訓練してきたとはいえ、為せば成る、というのは

後から振り返って思います。

 

ついでに言うと、神経伝達物質のGABAって発話に関係するそうですね。

ちょっと前にバレリアンの記事を書きましたが、

その後も摂り続けていて、長文がやたらとすらすら書けるようになった気がします。

というか、ますます長文になってしまう(笑)。

さらに人からうっとうしがられそうね(笑)。

もしかしたらGABAが関係するのは話し言葉だけなのかもしれませんが。

でも、バレリアン摂っていると心が穏やかになるので、

今では寝る前だけじゃなくて日中も摂っています(^_^)v

(ああ、話がずれてしまりが悪くなったわね。)

 

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最近はこちらにも書いています。

 

こちらもよろしく。

 

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