それでも雨が降るときは

ホリスティックに発達障害とつきあう

私がひきこもらなかった理由

吉濱ツトムさんの『今ひきこもりの君へおくる 踏み出す勇気』を読みました。

今ひきこもりの君へおくる 踏み出す勇気

今ひきこもりの君へおくる 踏み出す勇気

 

 

 この本の最初の方に「ひきこもりチェック診断」というのがあります。

やってみたところ、30項目のうち、「はい」が11項目。

5つ以上「はい」があると要注意なのだそうですが、

まあ、家で仕事をしているし、出不精なので、

ひきこもりに近いといえばそうなんだろうと思います。

 

でも、そうした因子がありながら今までの人生でひきこもることはなかったんですが、

その強力な抑止力となっていたものが、このチェック診断をやってみてわかりました。

 

「いいえ」と答えた項目のうち、

「収入がなくても生活ができる豊かな環境が用意されている」

「問題が起こった時、親や周囲が解決してくれた経験が多い or 解決してくれる環境にいる」

 

この2つです。この2つが「はい」だったら怠け者の私は

絶対にひきこもりになっていただろうと思います。

 

幸か不幸か、家族と折り合い悪く、今はほとんど縁が切れているような状態だし、

かつては、すでに家族にひきこもりの人間がいたこともあって、

まともに就職をしていなかった私がなぜか悪者になっていたので

(今考えると理不尽)ひきこもるわけにも、

実家に帰るわけにもいきませんでした。

 

風呂なしのアパートに住んでいたこともあったし、

バイトや派遣の仕事で食いつないできましたが、

重い子宮内膜症を抱えていても働かなければならなかったので、

生活保護がもらえたらいいのに、と考えたことすらありました。

 

誰にも頼れないとなると、自分で何とかするしかないわけで、

人一倍健康に気を遣うようになったのもそうした理由からです。

何とかしなければ、死ぬしかないわけですから

(という極端な考え方が私の場合は奏功した)。

 

ひきこもりにならなかったその他の理由としては、

意外と自分の特性をよくわかっていたこと。

絶対に普通の企業の正社員として働けるはずがないと思っていたので

最初から就職活動はまったくしませんでした。

仕事の話は後日また別に書こうと思いますが、

大学を出ながらも、いわゆるオーバークオリフィケーションで

(それが原因でいじめられたこともあった)

ハウスクリーニングや工場のラインの仕事をしてしのいでいた時期もあります。

 

でもまあ、本人としては大学出というプライドもゼロだったし

(そもそも恥ずかしいくらい学生時代は勉強しなかったし(笑))、

何よりもやりたいことがあったので、とにかくお金を稼がないといけない、

仕事は労働力を提供してお金をいただくところとドライに割り切っていました。

 

お金を貯めては海外に行っていたので仕事はいつも期間限定でやっていたため

居心地が悪くても、なんとか我慢していたのです。

 

まあ、そんなこともいつまでも続けていらず、現在は自営業で10年やっていますが、

ここに至るまでには紆余曲折がありました。

どうやってフリーランスの翻訳者として食べられるようになったかについては

こちら に少し書いています。

 

30を過ぎて仕事がなかなか決まらないという人の話を聞いていると、

ボーナスや厚生年金にものすごく執着があるなと感じます。

まあそれは、もらえたらいいんでしょうけど。

私はどちらも無縁だったのですが、そのために通勤電車に毎日乗って

合わない職場環境で無理をして精神的に壊れて医療費がかかることを考えると

そんなものもらえなくてもいいなーと考えちゃう単純な頭(バカ?)だったので

よかったのでしょうね(笑)。

そんなものにこだわって長い間無収入でいるより、

バイトでもいいから少しは働いた方が、

長い目でみたらかなりの額になるのではとも思ったりします。

 

特に立派なキャリアや特殊なスキルがあるわけではなくても

年齢がいってから正社員の仕事が見つかった場合、

実際に就職してからそれがブラックに近い職場だとわかることもあるようです。

そうなると、結局また辞めるハメになるわけで、

そこまで正社員にこだわる意味が果たしてあるのかどうか。

 

ひきこもってしまうとなかなか出られない原因には

ネットやSNSからの情報過多で他人の動向がわかりやすく、

自分を他人と比べて劣等感を抱きやすいということもあるのではないでしょうか。

他人のリア充を見せつけられ、それに比べて自分の現状は、と思いやすい。

「あなたの年収、大丈夫?」だとか(大きなお世話だ)、

広告でも劣等感をくすぐられます。

精神状態がよくないときにはあまり余計な情報は入れない方がいいのですが、

ひきこもっている人ほど一日中見がちなのでは、と思います。

この辺については、以前にも書きましたが。

 

特にやらなくてはいけないことがなくて「毎日が日曜日」状態だと、

発達障害脳はろくなことを考えません。

職場が嫌だからといって辞めて一日中時間ができたとしても

それで有意義なことをしているかというとそうでもないので、

仕事をすること自体が、ある程度生活に規則性をもたせてくれるのだと思います。

 

 

この本の最後に、「ひきこもり改善法5か条」として次のようにあります。

 

①「働かざるを得ない環境」を親や理解ある周囲の第三者に作らせる

②「スモールステップ」で成功体験。最初から高い目標を設定しない

③「働き方は多様」正社員や週5日労働が唯一の選択肢ではない

④「環境設定」が間違ったから失敗しただけ。能力不足は関係なし

⑤「立て直し」に年齢は関係なし。”人生100年時代”で考える

 

発達障害を抱えながらもひきこもりにならずにきた私は

ひきこもっている人たちから見れば「強い」のかもしれません。

でも、「働かざるを得ない環境」が私を強くしたのです。

 

ひきこもっていられるというのは見方を変えれば

「働かなくてもいい環境」にあるわけです。

ひきこもり状態にある人は、自分を不幸だと思うかもしれないけれど、

そうした恵まれている状況にあることに、

ほんの少しでいいから気づいてほしい。

 

そして、勇気をもって一歩踏み出すかどうかは、結局自分次第。

誰も代わりに足を踏み出すことはできません。

強くなれるかどうかも、強くなろうと思わなければ、なれないのです。

ひきこもりから抜け出す具体策を提示してくれているこの本、

手に取ってみてはいかがですか。

 

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

発売から1年経ちました。

こちらも参考にしてもらえると嬉しいです。

ガイド 壮年期のアスペルガー症候群:大人になってからの診断は人生をどう変えるか

ガイド 壮年期のアスペルガー症候群:大人になってからの診断は人生をどう変えるか

 

こちらもよろしく。

発達障害に関してのみ、無料でメールでのご相談もお受けしています。

この場合は返信に時間がかかることがありますので、あらかじめご了承ください。

 お問い合わせはこちらから